ささいなことでも自分が心動かされたことや感じたことを文にしていきたい。
そう思って始めたブログだが、むしろ最近、その逆だったことに気付かされた。
専業主婦である私は、一日中娘のこっちゅんと犬のアポロと一緒に過ごしている。夫は仕事で帰りが22時になることもあり、下手をすると言語の通じる人と会話しないまま一日が終わることもある。
こっちゅんもアポロも本当にかわいい。でも思いのままに振る舞う二人を前にしていると、どんどん自分の感情が「無」に近づいてしまうようになった。「無」の気持ちでないととても冷静に対応することができなくなってしまったのだ。
これでは自分もダメになるかもしれない。
そう感じた私は、もともと書くことが好きだったこともありこうしてブログを始めた。すると、心が動き始めたのだ。これまでは見逃していた青々と輝く葉の美しさや、小さい手のひらで私の背中をとんとんとしてくれるこっちゅんのかわいらしさ。ぴたっとおしりをくっつけてくれるアポロの体温。私には書きたいことがこんなにもあるのかと驚いた。
書こうと決めたからこそ心が動き出す。
日々の暮らしには、今しか切り取ることができない一瞬一瞬があるのだ。
今日はふと思い立ってこっちゅんと髪を切りに行った。
まだまだ美容室に慣れないこっちゅんは、切ってもらう間中カッチンコッチンに固まっていた。嫌がるでもなく、あばれるでもなく固まりきっている。
「こっちゅん、かわいくしてもらってるよ」
カット中に私が声をかけると、無言のままじろりと目玉だけを動かして私を見て、再び視線を鏡に戻す。自分の髪が切られている様子をじっと見つめていた。
その後、私もカットしてもらい帰宅すると、こっちゅんが
「まま、ここにいれてたよね」
と自分のおもちゃが入った引き出しをあさっている。何を探しているのと訪ねたらナイショと答えた。
それじゃあ探してあげようが無いじゃん…と思いながら昼食の片付けをしていると、
「あった!」
と嬉しそうにおもちゃの黄色いはさみを手にしている。
あー、美容師ごっごをしたいのかな、と思いながら見つめていると、はさみをアポロの毛に当て始めた。
「うごかないでねー。こっちゅんがきってあげるからねー」
のんびりとソファーで過ごしていたアポロは迷惑そうに顔をあげ、困り顔を私に向けた。
「こっちゅん、アポロはねんねしてたんだからかわいそうだよ」
そう私が言うと、こっちゅんは思いがけないことを言った。
「だってこっちゅんとままとアポロはいつもいっしょでしょ。こっちゅんとままはきったんだからアポロもきってあげないとかなしいよ。いっしょじゃないと」
アポロが自分だけ美容室に行けなかったことを悲しんでいるとこっちゅんは思ったようだ。これはいつも私が「ママとこっちゅんとアポロはいつも一緒」と言っているからだろうか。でも一人でお留守番をしていたアポロの気持ちを汲んであげるこっちゅんの優しさに私はキュンとなった。いつのまにアポロを思いやる気持ちを身につけたんだろう。
その後、はさみにおびえたアポロがクレートに隠れてしまったので、こっちゅんの思いは果たせなかった。クレートの前ではさみを手に「あぽー、ででおいでー」と立ち塞がるこっちゅん。思い通りにならないことは多いが、心はまた一歩成長したようだ。